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東京地方裁判所 昭和62年(行ウ)24号 判決 1988年1月28日

原告

国際開発株式会社

右代表者代表取締役

久保謙治

原告

宗教法人湖明寺

右代表者代表役員

古谷是信

右両名訴訟代理人弁護士

原哲男

伊藤薫

被告

町田市長

大下勝正

右訴訟代理人弁護士

飯田孝朗

城戸浩正

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

(主位的請求)

1 原告らが町田市真光寺町字四号三〇五番地一他三一筆の土地上に共同事業として寺院及び墓園を建設することを目的とする都市計画法三〇条の開発許可の申請を行うための事前行為として昭和六一年一一月二八日被告に対してした同意願及び協議願に対し、被告が何らの処分もしないことが違法であることを確認する。

(予備的請求)

2 原告らが町田市真光寺町字四号三〇五番地一他三一筆の土地上に共同事業として寺院及び墓園を建設することを目的とする都市計画法三〇条の開発許可の申請を行うための事前行為として昭和六一年一一月二八日被告に対してした同意願及び協議願に対し、昭和六二年七月一三日被告がした同意及び協議をしない旨の処分を取り消す。

(訴訟費用)

3 訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の答弁

主文同旨

2  主位的請求に対する本案の答弁

(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告らは、町田市真光寺町字四号三〇五番地一他三一筆の土地(開発対象予定面積二万七六一八平方メートル。以下「開発予定地」という。)上に、寺院及び墓園を建設する事業(以下「本件事業」という。)を共同事業として施行することを企画しているが、開発予定土地の面積が一〇〇〇平方メートルを超えるため、本件事業の施行に当たつては、都市計画法二九条により、開発行為についての東京都知事の許可(以下単に「開発許可」という。)が必要である。

ところで、同法三〇条二項によれば、開発許可の申請をするに当たつては、同法三二条に規定されている、開発行為に関係がある公共施設の管理者(以下「関係施設管理者」という。)の同意を得たことを証する書面及び当該開発行為又は当該開発行為に関する工事により設置される公共施設を管理することとなる者その他政令で定める者(以下単に「施設管理予定者等」という。)との協議の経過を示す書面を添付することが、義務づけられている。そのため、開発許可の申請をしようとする者は、右申請前に関係施設管理者の同意を得、かつ、施設管理予定者等と協議をする必要がある。

そこで、原告らは、本件事業の関係施設管理者であり、かつ、施設管理予定者等である被告に対し、昭和六一年一一月二八日、本件事業についての同意願及び協議願、すなわち同意及び協議をすることを求める申請(以下「本件申請」という。)をした。

被告は、本件申請に対し、同意もせず、協議にも応じないし、またこれを拒否することもしない。

なお、関係施設管理者及び施設管理予定者等が、関係法律の規定の上で町田市と定められているとしても、行政事件訴訟法一一条、三八条によれば、不作為の違法確認の訴え及び処分の取消しの訴えの被告は行政庁とされており、右行政庁とは、国又は公共団体から公権力の行使の権限を与えられている機関を意味するところ、本件における右機関は、町田市長である被告であるから、本件訴訟において、被告適格を有する者は被告である。

2  同意及び協議の処分性

行政事件訴訟法三条五項及び二項に定める不作為の違法確認の訴え及び処分の取消しの訴えの対象となる処分は、行政庁の行う行為のうち、その行為によつて直接国民の権利義務関係に影響を及ぼすものをいうと解される。そして、関係施設管理者の同意及び施設管理予定者等との協議があれば、開発許可の申請が可能となり、他方、これがなければ右申請は不可能となるのであり、右の同意及び協議は、直接国民の権利義務に影響を及ぼすものであるから、不作為の違法確認の訴え及び処分の取消しの訴えの対象となる処分である。

3  同意及び協議に対する応答義務

不作為の違法確認の訴えの対象となる法令に基づく申請といえるためには、申請の根拠が何らかの法令にあること及び行政庁に応答義務があるものであれば足りるものと解すべきである。

都市計画法三二条は、開発許可を申請しようとする者は、同意を得、協議しなければならない旨規定しているが、このことは、開発許可の申請をしようとする者が、同意及び協議の申請をすることを前提としているものと理解できるから、同意及び協議の申請は、同条に根拠があることになる。

また、同法三三条一項は、都道府県知事は、開発許可の申請につき、同項の定める基準に適合しており、かつ、その申請の手続が同法又は命令に違反していないと認めるときはこれを許可しなければならない旨を、同法三五条は、都道府県知事は、右申請があつたときは、遅滞なく許可又は不許可の処分をし、それを文書で申請者に通知しなければならず、この場合に、不許可の処分をするときは、その理由も併せて通知しなければならない旨を、同法五〇条は、右申請に対する処分又は不作為に不服のある者に対して、開発審査会に対する審査請求ができる旨を、同法五二条は、右裁決を経た後でなければ同法五〇条一項に規定する処分取消しの訴えが提起できない旨を定めている。これらの規定によれば、開発許可を受けようとする者は、都道府県知事の許可が受けられるか、理由を付した不許可通知を受ける権利及び不服申立ての権利が与えられているものと理解できる。ところで、前記1記載のとおり、開発許可の申請をするには、関係施設管理者の同意を証する書面及び施設管理予定者等との協議の経過を示す書面を添付する必要がある。この同意及び協議が拒否され、その理由さえ明らかにされないとすれば、開発許可を受けようとする者に与えられている右に述べた権利が結果的にすべて奪われることになるから、同意及び協議については、開発許可についての同法三五条、五〇条及び五二条に相当する明文の規定はないが、右各規定が準用されるものと解すべきである。そうすると、同意及び協議の申請に対し、関係施設管理者及び施設管理予定者等には、応答義務があるものということができる。

したがつて、同意及び協議の申請は、不作為の違法確認の訴えの対象となるものであり、本件申請に対し、何ら応答しない被告の不作為は違法なものである。

なお、同意及び協議の対象となる公共施設は、もともと不特定多数の一般人の使用に供することを目的として設置されているものであることに鑑みると、当該公共施設の維持管理上著しい不都合が生じない限り、同意を与え、かつ、協議に応ずることが、法律の規定をまつまでもなく、当然予定されていると考えられるから、その許否基準につき法律がこれを規定していないことをもつて、同意及び協議の申請に対し、関係施設管理者及び施設管理予定者等に応答義務がないものとはいえないのである。また、同法三二条は、同意というそれをするかしないかにつき完全な自由裁量を認めるかのごとき用語を使用しているが、右のとおり、関係施設管理者は、当該公共施設の維持管理に著しい不都合が生じない限り、同意しなければならない義務を負うものと解すべきであるから、同意という用語が使用されていることをもつて、応答義務がないとはいえないのである。

4  本件申請をした後、弁護士原哲男(本件訴訟の原告ら訴訟代理人。以下「原弁護士」という。)は、原告らの代理人として、昭和六一年一二月二日付け及び同月二二日付けで本件申請に係る同意及び協議を速やかに行うよう催告した被告宛の内容証明郵便を発送したが、これに対し、被告から何の応答もなかつた。そこで原弁護士は、昭和六二年一月一四日及び同年二月六日の二回に亘り、町田市役所に架電したところ、町田市宅地造成指導室の阿波野参事及び佐藤主幹から、本件申請に対しては、市の上層部から以後何らの手続も進めるなという趣旨の内部的な指示がされており、内容証明郵便に対しても正式な回答をしないのではないかと思われる旨の回答(以下「本件各回答」という。)を得た。しかし、本件各回答は、いずれも本件申請に対する拒否の通知といえるようなものではなかつた。このことは、本件訴状に、右架電の事実が記載されており、また、本件訴訟の同年四月二二日の第一回及び同年五月二七日の第二回の口頭弁論期日において裁判長からこの点の求釈明があつたのにかかわらず、被告において、既に拒否の通知をした旨の答弁をしなかつたことに照らしても明らかである。

しかしながら、同年七月一三日の本件第三回口頭弁論期日において陳述された被告の同日付けの準備書面では、本件右各回答は、本件申請に対する拒否の通知である旨の主張がされており、このことを全体的にみると、右主張がされたことによつて、本件申請に対する拒否処分がされたものと評価する余地がないとはいえないのである。

そこで、仮に右主張が本件申請に対する拒否処分に該当するものとして考えると、右拒否処分は、原告らから、本件事業についての開発許可の申請権を奪うばかりでなく、開発許可の申請に対して都市計画法三三条により東京都知事から審査を受ける権利を奪う違法なものといわなくてはならない。

5  よつて、主位的に、本件申請に対する不作為が違法であることの確認を求め、予備的に、本件申請に対する拒否処分の取消しを求める。

二  被告の本案前の主張

(主位的請求について)

1 同意は、開発許可の申請に対する許否の処分とは異なり、右申請に対する賛成の意見ないし意思の表明に過ぎず、また、協議は、開発許可の申請をしようとする者と相談することであつて、いずれも国民に対し、具体的に法律上の効果を発生させるものではない。更に、法令用語の一般的用法からいつても、同意及び協議は、抗告訴訟の対象となる処分とはいえない。

2 都市計画法三二条は、開発許可の申請をしようとする者は、関係施設管理者の同意を得、かつ、施設管理予定者等と協議すべき旨を規定しているが、右規定は単に右申請をしようとする者の義務という形で定めを置いているのみで、同意及び協議の申請について何ら具体的に定めているわけではないし、他に同意及び協議の申請について具体的に定めた法令は一切存在しないから、同意及び協議の申請は、行政事件訴訟法三条五項にいう法令に基づく申請に当たらないというべきである。

また、都市計画法五〇条は、処分のみでなく、不作為も対象としているから、同条により不服申立てのできる申請に対しては、行政庁に応答義務があるというべきである。しかし、同条は、同意及び協議について定めている同法三二条に関しては、何ら言及していないから、同意及び協議については、仮に申請といつたものが考えられるとしても、行政庁は、それに対して応答義務を負わないものというべきである。

3 本件事業に関係がある公共施設及び本件事業又は本件事業に関する工事により設置される公共施設は、道路、公園緑地、水路、防火施設(貯水槽)及びゴミ置場であるが、その管理者はいずれも町田市であつて、被告ではないから、被告は、本件申請に係る同意及び協議をする主体ではない。

4 本件申請に対して、被告には、応答義務はないが、被告は、本件各回答以前において、本件申請に係る同意及び協議はしないことを決定し、本件各回答の際に、その旨を原告らに通知しているから、被告には、本件申請についての不作為はない。

(予備的請求について)

5 前記1と同旨

三  請求原因に対する認否

1  請求原因1について

請求原因1のうち、被告が、本件申請に対して、何らの応答もしていないことは否認し、その余の事実(ただし、本件申請の相手方は、被告ではなく、町田市である。)は認め、主張は争う。

2  同2及び3は争う。

3  同4のうち、原弁護士が原告ら主張の日付及び内容の内容証明郵便を発送したこと、同弁護士が原告ら主張の日に町田市役所に架電し、阿波野参事及び佐藤主幹が応答したことは認め、主張は争う。阿波野参事及び佐藤主幹は、右応答に際して、本件申請に係る同意及び協議はしない旨の町田市の決定を通知している。なお、昭和六二年七月一三日本件第三回口頭弁論期日に右の決定を原告らに対して初めて表示したわけではない。

第三  証拠<省略>

理由

一原告らが、本件事業に係る開発許可の申請をするために、本件申請をしたことは(ただし、本件申請の相手方の点を除く。)、当事者間に争いがない。

二同意及び協議の処分性

1  処分取消しの訴え及び不作為の違法確認の対象となる処分(行政事件訴訟法三条二項、五項。以下「処分」という。)は、公権力の主体としての行政庁がその優越的な地位に基づく公権力の行使として行う行為であつて、国民の権利義務又は法律上の利益に影響を及ぼすような性質のものをいうと解される。

以下この見地に立つて、都市計画法三二条の同意及び協議の処分性について検討する。

2  同意について

(一)  都市計画法三二条は、「開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者の同意を得・・・・・なければならない。」旨規定している。また、同法三〇条二項は、開発行為の許可(以下「開発許可」という。)の申請の申請書に、右の「同意を得たことを証する書面」の添付を要求し、同法三三条一項は、開発許可の申請が同項の定める基準に適合しており、かつ、「その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならない。」旨規定している。

右各規定によると、右の同意が得られないときは、開発許可の申請をすることができず、右の同意が得られて初めて適法に開発許可の申請をすることができることになるものということができる。

(二) ところで、同法三二条にいう公共施設は、同法四条一四項及び同法施行令一条の二によれば、道路、公園、下水道、緑地、広場、河川、運河、水路及び消防の用に供する貯水施設を指すものとされている。しかるに、同法関係法令は、右の各公共施設について格別の定義を定めていないから、右の各公共施設の意義は、行政法上一般に用いられている意義に従い理解するのが相当である。例えば、道路についてこれをみるに、道路には、道路法二条一項、三条に規定する道路、道路運送法二条八項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所(道路交通法二条一項一号参照)がすべて含まれると解される。そうすると、この道路には、国若しくは地方公共団体又はその機関が管理するいわゆる公道のほか、私人が事実上一般交通の用に供しているいわゆる私道(建築基準法四二条一項五号参照)も含まれるものということができる。また、道路以外の公共施設についても、道路の場合と同様、私人が事実上その用途に供しているものが含まれているものと解される。

右に述べたところによると、関係施設管理者(都市計画法三二条に規定されている、開発行為に関係がある公共施設の管理者)には、国若しくは地方公共団体又はその機関のみならず、私人もまた含まれるものということになり、この私人は、当該公共施設の敷地、施設等につき、所有権等の私的権限を有し、この権限に基づき当該公共施設を管理しているものということができる。

(三) 右(一)に述べたように、関係施設管理者の同意は、それがなければ、適法に開発許可の申請をすることができないものであるから、開発許可の申請に影響を及ぼすものであるということができる。しかし、右(二)に述べたように、関係施設管理者には、私的権限に基づき公共施設を管理する私人も含まれているところ、私人が公権力の主体たる行政庁となる場合は稀であつて、私人を行政庁とする場合には、関係法令にその旨の規定が置かれるのが一般であるが、都市計画法関係法令をみても、関係施設管理者が私人である場合について、右の私人を公権力の行使の主体たる行政庁とする旨の規定もなければ、その趣旨を窺わせるに足りる規定もないので、右の私人には、行政庁たる地位はなく、また、右の私人のする同意には、公権力の行使たる性格が付与されていないものと解するのが相当である。そして、そもそも公共施設の管理行為が本来的に公権力の行使であるとはいえないこと、都市計画法三二条が「同意」という公権力の行使としての性格を読み取りにくい用語を用い、かつ、それをするについての要件を規定しておらず、それが処分であることを窺わせるに足りる法令の規定がないこと、また、右に述べた私人の場合と区別して、関係施設管理者が国若しくは地方公共団体又はその機関である場合にのみ、そのする同意に公権力の行使としての性格を与えていることを認めさせるに足る法令の規定もないことなどを合せ考えると、関係施設管理者のする同意は、関係施設管理者が、たまたま国若しくは地方公共団体又はその機関である場合でも、私人である場合と同様、公権力の行使とはいえず、処分としての性格を有しないものというほかはない。

このように考えると、右の同意は、所有権等私的権限に対する制限、変更をするについては、当該私的権限を有する者が制限、変更をしようとする者に与える同意と同一の性格のものであり、したがつて、関係施設管理者は、右の私人と同様、同意をするか否かを全く自由に決めることができるものということができる(この見地に立つと、同法三二条の「関係がある」というのは、廃止、変更を要するとの意味に限定的に解釈されるべきであり、同条の同意は、基本的には、同法三三条一項一四号の「同意」と同趣旨のものということになる。なお、同号によると、そこに規定する権利を有する者の同意が相当数あれば、開発許可がされ得ることになつているが、開発行為等がそこに規定する権利を有する者にかかわる土地についてその者の同意なしに行い得るわけではない。)。右のように解される以上、関係施設管理者の同意がない場合に開発許可の申請ができないとしても、それは同法関係法令が、他人の権利をその者の同意なしに制限、変更できないという原則に対して変更を加えなかつたことによる当然の結果であり、その場合には、開発許可の申請をする者は、開発行為の内容を変更して、同意の得られない公共施設を開発行為の対象から除くなどの措置をとるほかはないというべきである。

3  協議について

(一) 都市計画法三二条は、「開発行為を申請しようとする者は、あらかじめ、・・・・・当該開発行為又は当該開発行為に関する工事により設置される公共施設を管理することとなる者その他政令で定める者と協議しなければならない。」旨規定し、その政令として同法施行令二三条が置かれている。しかし、同法三〇条二項は、開発許可の申請の申請書に、右の「協議の経過を示す書面」の添付を要求しているのみである。

右各規定によると、開発許可の申請に当たり、右の書面の添付を要するが、協議が整うことは要件とされておらず、また、右の協議とは、開発許可の申請をしようとする者が施設管理予定者等(同法三二条に規定されている、当該開発行為又は当該開発行為に関する工事により設置される公共施設を管理することとなる者)と現実に協議した場合のほか、開発許可の申請をしようとする者が誠意をもつて施設管理予定者等に協議を申し入れたが、施設管理予定者等において合理的な理由なく応じなかつた場合も含むものと解されるから、誠意をもつて協議の申入れをしている限り、開発許可の申請をすることに支障はないものということができる。

(二)  また、前記2の(二)で述べた同法三二条の公共施設の意義等及び同法施行令二三条の規定する協議の相手方によると、施設管理予定者等には、私企業をはじめとする私人が含まれていることは明らかである(なお、原告ら主張によれば、本件の開発予定地は、請求原因1のとおり約2.7ヘクタールであるから、それを前提とすれば、同法施行令二三条は適用がないが、そのことは、ここでの判断及び以下の判断を左右するものではない。)。

(三) そして右(二)に述べたように、施設管理予定者等には、私人も含まれているのに、右の私人を公権力の行使の主体たる行政庁とする旨の規定もなければ、その趣旨を窺わせるに足りる規定もないこと、同法三二条が「協議」という公権力の行使としての性格を読み取りにくい用語を用い、かつ、協議に応ずべき要件を規定していないことなどの事情に、前記2の(三)で述べたところを合せ考えると、施設管理予定者等が応ずる協議は、公権力の行使とはいえず、処分としての性格を有しないものというほかはない。

また、右(一)に述べたように、開発許可を申請しようとする者は、施設管理予定者等が協議に応じないとしても、誠意をもつて協議を申し入れている限り、開発許可の申請ができるものであるから、施設管理者が協議に応じないこと自体は、開発許可の申請をするにつき何らの影響も与えるものではなく、この点からも、右の協議は処分としての性格を有しないということができる。

三以上によれば、都市計画法三二条の同意及び協議は、不作為の違法確認の訴え及び処分取消しの訴えの対象となる処分には該当しないから、その余の争点につき判断するまでもなく、本件訴えはいずれも不適法である。

よつて、本件訴えをいずれも却下し、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官鈴木康之 裁判官太田幸夫 裁判官加藤就一)

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